ED治療薬を購入する場合、バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)のどれがいいのか、選択に迷うと思います。色々なサイトで情報が提供されていますが、医学的なデータも知っておくことで、今後の新薬に対しても正しい選択基準を持って判断できるようになると思います。
バイアグラ シルデナフィル | レビトラ バルデナフィル | シアリス タダラフィル | |
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化学式 | C22H30N6O4S | C23H32N6O4S | C22H19N3O4 |
分子量(g/mol) | 474.6 | 579.1 | 389.4 |
Tmax (h) | 1 (0.5~1.5) | 0.8 (0.7~0.9) | 3 (0.5~4.0) |
T1/2 (h) | 3~4 | 3.2~5.3 | 14~15 |
生物学的利用率(%) | 40 | 15 | 36 |
PDE1 | 281 | 70 | 3000~ |
PDE5 | 3.5~8.5 | 0.1~0.7 | 0.94~6.4 |
PDE6-rod | 37 | 3.5 | 1260 |
PDE6-cone | 34 | 0.6 | 1300 |
PDE9 | 2610 | 581 | 100000~ |
PDE11 | 2730 | 162 | 37 |
Tmax(最高血中濃度到達時間)
Tmaxは薬を服用してから血中濃度が最大値になるまでの最高血中濃度到達時間のことです。この値を見れば即効性のある薬かどうか、性行為の何分前に飲めば良いのかが分かります。この表からバルデナフィル【レビトラ】が一番早く最高血中濃度に達します。つまり、効果発現時間が一番早いことがわかります。 シアリスの0.5~4時間という数値は、他の2剤よりも時間がかかることがあるということが分かります。この時間のムラはシアリスが食事の影響を受けないと言われる部分に影響されています。空腹時は0.5時間で最高濃度に達するが、食後の服用では4時間もかかるという事です。シアリスは食後でも効果の強さは変わらないが、効果が出るまでの時間にはかなり影響があるということであり、早めの服用が無難なことが分かります。
T1/2(半減期)
T1/2は血中濃度が最大値の半分以下になる血中濃度半減期(消失半減期)の時間です。 表からシルデナフィル【バイアグラ】は半減期(T1/2)が早めなため持続時間が他の2剤よりも短くタダラフィル【シアリス】が長時間作用するということがわかります。 概ね半減期の1.5倍~2倍の時間は効果が感じられるでしょう。
※:半減期という言葉をニュースなどで聞かれた方も多いと思います。原発事故以来、有害な放射性物質が飛散し、食物や動物体内へ取り入れられたことによる、食の安全性などでも話題になりました。 ナトリウム24は半減期が15時間と短いため問題になりませんが、セシウム137は30年と半減期が長いため、人間が被爆すると生涯体内から抜けきることはありません。さらに、プルトニウム239は2.4万円、ウラン238は45億年という、人間の一生に比べるとはるかに長い半減期であり、実質減っている事にはみなされません。
ED治療薬の場合、半減期が長いほど効果の持続時間が長いため優秀だと思われがちですが、実際には体内に残留する時間が長いため、副作用が発生している時間も長いわけですので、決して効果が長い方が良いわけではありません。
生物学的利用率
生物学的利用率とは、バイオアベイラビリティーともいい、摂取した薬剤の有効成分が体全体に吸収される割合です。 血管から直接注入する静脈注射の生物学的利用率が100%です。 表を見るとバルデナフィル【レビトラ】が一番、率が低いのですが、後に説明している「PDE5」の阻害作用が少量でも強いため他の2剤に引けを取らない効き目なのでしょう。 一方、シルデナフィル【バイアグラ】は生物学的利用率40%と一番効率が良いので薬効の有効率も上がります。 PDE5阻害能力が他に比べて少し劣る感がありますが、上記の表の数値でも十分に効果があるので根強い人気があります。
PDE1
PDE1は脳、心臓、骨格筋、肝臓、血管、筋肉、内臓筋に発現するPDEですから、これを阻害する効果の一番高いバルデナフィル【レビトラ】 、続いてシルデナフィル【バイアグラ】は「顔のほてり」「目の充血」「動悸」「頭痛」などの副作用が強く、タダラフィル【シアリス】は比較的軽いと言われる根拠となるデータ(裏付け)と言えるでしょう。
PDE5
PDE5はcGMP(環状グアノシン一リン酸)を壊す酵素で、ED治療薬のメインの酵素です。 勃起をする時に脳から神経を介してNO(一酸化窒素)が放出され局部の細胞内にcGMPという血管を拡張させる物質が増え、陰茎海綿体の平滑筋が緩むことで海綿体に血液が流れ込み勃起するのです。 そして勃起が萎える際にPDE5という酵素が放出されcGMPを壊すことで海綿体の血管が収縮して勃起が治まります。 上の表でいくとPDE5阻害作用が最も強いのはバルデナフィル【レビトラ】であることがおわかりいただけます(但し、生物学的利用率が低いので総合的な勃起力の強さではありません)。
PDE6
PDE6は主に網膜にある酵素です。 眼球内に入った光が奥の網膜に集まり、そこから光の信号が視神経、脳へと伝わることで人は眼が見えています。 この脳への伝達に関わる酵素がPDE6です。 シルデナフィル【バイアグラ】とバルデナフィル【レビトラ】はPDE6阻害作用があるので眩しく見えたり、青白く見えたりという視界による副作用がタダラフィル【シアリス】よりあるという明確な根拠となります。
PDE9
PDE9は人では脳、脾臓、小腸などに発現が認められています。 特にネズミやリスなどには脳の局在が解析されており、PDE9は脳の全領域にて発現することが解明されています。 バルデナフィル【レビトラ】が一番ですが、さほど阻害作用は強くはありません。しかし3剤の中で一番阻害作用があるので、その分副作用に反映されやすいでしょう。
PDE11
PDE11は身体全体にある酵素で役割等の詳細は、まだ解明されていませんが、犬を用いた実験では精子の減少が報告されています。 表を見る限りタダラフィル【シアリス】がPDE11の阻害作用が強いのがわかります。これにより何かしらの副作用に繋がっていることは確かですが体全体にあり詳細の解明がなされていませんので因果関係を掴むことは現段階では難しいと言われています。
性的刺激が必要不可欠
医学的なデータで各成分を比較しましたが、全てPDE5を阻害する作用であり、勃起するためには性的な刺激を受けてcGMPの働きが活発になる必要があります。 性的な興奮が得られない状態・状況や、全く興味のない女性相手では勃起薬も意味をなしません。
この性的刺激部分を逆手に取った早漏防止方法があります。本ホームページでは勃起について取り上げているため、射精のメカニズムについては割愛しますが、射精は物理的な刺激(亀頭への摩擦)や、性的な興奮が原因でクライマックスを迎えて発射します。 ですから、イキそうになったら頭の中で「キライな人」や「イヤなこと」を思い浮かべると、cGMPが減少、興奮も収まり射精を我慢できると言われています。
医学的なデータで比較しましたが、各要素の関連が複雑で分からない方も多いかと思います。そこで、これらのデータをもとに分かりやすく比較してみました。